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【コラム】「進化」 の反対は?

 相手が自然や生き物についてどういった考え方を持っている人物か知りたいときに、僕はこの質問をよくします。

 「退化」という言葉が頭に浮かんだ人が多いかもしれません。実際、生物の授業で学生に質問をすると、この答えがよく返ってきます。

 しかし、じつは答えは「遺伝」なんです。

 さらに意外かもしれませんが、「退化」は進化の1つの現象に含まれます。つまり、「退化」も「進化」ということなんです。

 よく一般的に使われている「進化」は、「製品がより高性能に進化した。」や、若い人だと「○○が○○に進化して強くなった。」などと、何かがより優れたものになることに使われます。「成長」に似た使われ方と言って良いでしょう。

 そして、「退化」は逆にマイナスイメージとして、より劣ったものになることに使われます。

 だから、人間は猿から進化したということに「より優れた存在になった」という認識を持つ人がよくいます。

 しかし、自然を扱う学問では基本的に、生き物に優劣はつけません。

 生き物に優劣をつける発想を捨てて、猿が人間に進化したという現象を単純に説明すると、それは「変化」したといえるでしょう。

 例えば、猿には尻尾がありますが、人間にはありません。それは、生物学的にいうと尻尾が「退化」したのですが、もっと一般的にいうと「変化」したといえます。

 逆に、猿は人間と同じように、目と鼻、口を持っています。つまり、それらは「変化しなかった」ということです。ようするに、「遺伝」したんですね。二重まぶたの親からが産まれ子供が同じ二重まぶただったら、それは遺伝したというのと同じです。

 そう考えると、親が持っている性質が次の世代に受け継がれるということ(変化しないこと)が「遺伝」であり、逆に猿が人間に進化して受け継げられなかった尻尾は「変化」ということだと分かってもらえるでしょう。

 つまり、「進化」=「変化」 ⇔ 「遺伝」 =「不変」となります。

 一般的に、二重まぶたの親から一重まぶたの子供が産まれたら、その子のまぶたが「退化した」や「進化した」とは言わないはずです。なぜなら私達の価値観に、「まぶたの一重二重に優劣をつけたくない」というのがあるからです。

そのため、生き物に優劣をつけない自然を扱う学問では「進化」⇔「遺伝」となるのです。

最後に:

こういうのを書くと、「人間と他の生き物を同列に扱うのか?」という質問になりますが、僕はこれはあくまで学問上の発想だと捉えています。​自分にとって何が大切か、何が幸せかというのは個人の価値観や感情の問題です。少なくとも僕は、「優劣」と「大切さ」はまったく別の基準だと考えています。